原油は、常圧蒸留によって、沸点留分の異なるナフサ、灯油、軽油、重質油の各留分へと分留されますが、その中でも比較的沸点の低い留分にライトナフサがあります。
ライトナフサは、炭素鎖の数で言うと、炭素鎖5のペンタン、炭素鎖6のヘキサンを主成分とするガソリンの留分に相当しますが、ガソリンのアンチノック性の指標となるオクタン価が低いことから、市場へ出荷するレギュラーガソリンを製造する上でさまざまな制約が発生します。
そこで、ライトナフサのオクタン価を向上させる役目を担うのが「異性化触媒」です。
ライトナフサは複数の炭化水素化合物から構成されていますが、オクタン価の低い直鎖状の分子構造をもつペンタンとヘキサンを、オクタン価の高い、分岐した分子構造をもつイソペンタンとイソへキサンへと変換するのが「異性化反応」です。
ライトナフサの異性化によってオクタン価が向上し、また硫黄分が少なく、ベンゼンなどの芳香族をほとんど含まないため、環境にやさしい燃料油として注目されています。
骨格異性化反応
図中の数字はオクタン価を表します。
コスモ石油は、三菱重工業株式会社と共同で新規の異性化触媒の開発を行ないました。 開発した異性化触媒は、これまで工業化が難しいと言われていた、ジルコニア(ZrO2)に硫酸(H2SO4)を担持した「固体超強酸」と言われる硫酸化ジルコニア(SO42-/ZrO2)触媒に、貴金属を添加することで、触媒の劣化の要因となる炭素の生成を抑えて、安定した触媒性能を発現させることに成功しました。
本開発触媒は、石油精製触媒を全世界に販売している米国UOP社にライセンスされ、2004年2月現在で、世界9カ国の11基の異性化商業装置に採用されております。
さらに、コスモ石油は「石油コンビナート高度統合運営技術研究組合 石油精製環境低負荷高度統合技術開発事業」に参画し、2005年9月より国内の製油所で初めて異性化プロセスを実用化しました。